第三弾は日本海軍のデストロイヤー
駆逐艦「天霧」がお題です。
第三弾は 1/350スケール 帝国海軍駆逐艦 天霧
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(1)組み立ての
ポイント
(2)塗装
工程.1
(3)塗装
工程.2
(4)デカール
の貼付
(5)細部の
確認
(6)墨入れ (7)完成
使用キット ■FW2 帝国海軍駆逐艦 天霧
メーカー希望小売価格 本体¥7,300
で、この駆逐艦シリーズですが、実は設計開始から発売まで3年もかかったキットなのです。
初めての艦船フルキット開発ということもあったんですが、それよりも、ナノ・ドレッドシリーズ並みの精密さを艦全体に盛り込むという膨大な作業量や、艦体形状などにこだわって、一度できあがった図面のほとんどを設計変更したりもしていたためです。
ええ、発売一ヶ月前頃には職人達の形相には鬼気迫るものがありましたよ...
でも、その甲斐あって大ボリューム(当社のキットとしては!)かつ精密なキットに仕上がったと思います。組立てし易い設計を心掛けているので、コツコツ組み立てもらえればきっと満足いく仕上がりになると思います。
このキットについて
この天霧は、同型艦の綾波、敷波と同じ特型駆逐艦II型に分類される艦です
(ちなみに以前、綾波の次に敷波をリリースしたのは狙ってのことだよね?との声を多数いただきました。ハテ?何のことですか...?)。
何で数ある特型駆逐艦から天霧を選んだのかと言うと、やっぱり若かりし頃の米大統領ジョン・F・ケネディが乗った魚雷艇PT-109と衝突&撃沈したという凄いエピソードがあるから。だからアオシマさんのPT-109とセットになっているのです。

今回も職人Nに作ってもらいました。もともとホビーショー展示用に作ったものなので、
パーティングラインの処理や、ディテールアップは行っていません。
なお、作例は天霧ですが、綾波・敷波と共通する部分も多いので、同型艦作成の際にもご参考にしてください。
(1)組み立てのポイント
まず組み立て前に、甲板(かんぱん)裏側や、艦橋内側から穴あけ加工が必要なところを説明書で確認し、写真のようにマジックなどで印をつけておけば加工忘れを減らすことができると思います。


今回の作例では、艦橋トップは開放しています。キットは艦橋トップをキャンバスで覆った状態と、写真のようにキャンバスを外し双眼鏡がむき出しの状態を選択することができます。
(ちなみに、綾波との違いである艦橋前面の窓の下に取り付けられた追加装甲板や、増築された機銃台もちゃんと再現していますよ)
艦首と艦尾の左右貼り合わせ部分は目立つところなので、接着後パテを盛り、完全に合わせ目を消していきます。ちなみに、パテが余計なところに付いてしまわないように、周囲にマスキングテープを貼ってからパテを盛っていくと後の作業が楽になります。
パテを盛り、完全に乾燥したら、ナイフで荒削りしたあと、サンドペーパー(紙やすり)で形を整えます。細く短冊状に切ったサンドペーパーを割り箸の先などに貼ったものを使うと作業しやすいですよ。
なお、この作業ではナイフで荒削りしたあとサンドペーパーの800番のみで整形しています。


ちょっとコツが必要なテクニックですが、マスターすると凸モールドの航空機キットにも使えるテクニックです。
このテクニックが難しければ、短く切った延ばしランナーを貼り付ける方が簡単かもしれません。
(2)塗装工程.1
まずリノリウム色を塗装します。写真のように船首楼(せんしゅろう=船首の一段高くなっている部分)の甲板を接着する前に塗装します。
また、上部構造物(艦橋や武装など、甲板上に付けるパーツで軍艦色に塗装するもの)もまだ取り付けません。
後で艦底色&軍艦色を塗るときに境目をきっちり塗り分けるので、少々はみ出しても構いません。でも塗り残しはなるべくないように!
なお船首楼甲板を接着してしまうと船首楼に隠れて一部塗装出来ない部分がありますのでご注意を。
リノリウムって何ぞや?
リノリウムって漠然と「すべり止めや、鉄板の日光反射による船上の気温上昇を抑えてるもの。これ貼らずに鉄甲板むき出しで南方へ行ったら、それは大変」というイメージだけで、どういう物質か知らなかったので調べてみると、ジュート(麻の一種)に、アマニ油に松ヤニや、コルク粉なんかを混ぜたものを塗って固めているもので、一見するとビニールっぽく病院など建築物の床材に使われているらしいです。




次に艦底色&軍艦色を塗るために、リノリウム色で塗装した部分をマスキングをします。船上の突起(構造物や艤装品)部分までマスキングしないようにテンプレートを使用してテープをカットしていきます。




リノリウム部分をマスキングし終えた船体。
画像のような複雑な面にマスキングテープを効率よく貼っていくには、あらかじめ細かく切ったマスキングテープを貼り足していく方法がよいと思います。





リノリウムをマスキングした後、艦底色を塗ります。艦底色もマスキングするので、はみ出しは気にせずに塗ってOK。塗装後マスキングします。マスキングはなるべくキッチリと。
今回の作例では中央構造物を先に組み上げています。
煙突先端の黒塗装を済ませ、マスキングを行っています。
船体に接着する前に中央構造物を単独で組み上げたのは、機銃座などの裏側を塗装しやすくする為と、軍艦色の塗装工程をなるべく一度に済ますためです。
中央構造物と同様に、艦橋も同時進行で塗装するために組立てておきます。
しかし、クリアーパーツ(パーツ番号:G2)はまだ接着せず別個に塗装します。これは完成時に内側の天井が透明だと不自然に見えるので、天井内側も塗装するためです。
窓もリノリウム部分のマスキングと同じく細切りのマスキングテープでマスクします。窓内側のマスクも忘れずに。
(3)塗装工程.2
軍艦色の塗装を行います。この際に上記の窓のパーツや、主砲の砲身(パーツ番号:Y10/Y9)、艦載艇(WZ1-4など)など軍艦色で塗装するパーツ一式を塗装すれば工程短縮に繋がります。

写真は船体の軍艦色を塗装し、中央構造物を接着したところ。接着の際には、干渉するリノリウム部分のマスキングテープを剥がしています。
砲身(Y10/Y9)は軍艦色を塗装してからマスキングをし基部のセールカラーを塗装しています。これは砲身部分(円柱状になっている部分)をマスキングする方が簡単だからです。
塗装を終えた砲身パーツ。
続いて細部の塗装を行います。右は魚雷パーツ。銀色は剥離しやすいため先に黒塗装を行っています。




マスキングが難しい奥まった箇所や細部は筆塗りで仕上げていきます。修正がしやすいので筆塗りは全てエナメル塗料を使用しています。
軍艦色と白色をエアブラシで塗装してからタンを筆塗りします。
浮き輪はランナーから切りはなす前に塗装します。切り口は接着してからタッチアップします。
左のような、わずかな部分に透明を残すパーツは、マスキングせずに塗装してから薄め液で塗料を落とすほうが簡単でしょう(若干、透明部分は白化しますが、薄めたクリアーでさっとなでると多少は透明度は多少回復します)。
チェーンは塗装後、写真のようにセットしてから瞬間接着剤(低粘度タイプ)で接着します。
接着剤は少量で充分なので流しすぎに注意します。
基本塗装を終えた状態。
(4)デカールの貼付
デカールを貼る箇所に段差やモールドがある場合は、まず貼る箇所にマークソフター(またはマークセッター)を塗ります。
そこへデカールを台紙から滑らすように乗せ、位置調整を行います。
位置が決まれば、綿棒をそっと転がしてマークソフターを吸わせながら、デカールを圧着させていきます。
小さな部品にデカールを貼る場合は写真のように固定して貼るとよいと思います。
つや消し塗装した面に、大きなデカールを貼るとシルバリング(デカールが密着せず、部品とデカールの間に隙間ができ、光って見える現象)を起こしやすいため、台座はグロス(つや有り)塗装にて仕上げています。
(5)細部の確認

カッターボートをダビットに取り付けます。
このパーツは接着面積が少なく、また塗装後に接着したほうが組み立て易いため、プラスチックモデル用の接着剤を使用するよりも強力な弾性接着剤を利用した方がよいでしょう。
接着剤を不要紙などの上に出し、爪楊枝の先に少しすくって接着面に塗る方法がやりやすいと思います(接着剤の付けすぎ注意)。

接着剤が固まるまで動かさないようにします。
ちなみに写真は固まるまで手で持ち続ける苦行の図。
細部塗装の塗り残し確認 下記の写真を参考に塗り残しがないか確認してください。
PT-109
PT-109を展示するときは必ず専用の台座の上に置くようにしましょう。スクリューが細く繊細なので折れる危険性があります。
(6)墨入れ
墨入れとは、各モールド(彫刻)やパネルラインの凹凸をクッキリと際立たせるために輪郭線を入れる作業です。墨入れを行うと完成品がシャープな仕上がりになります。

まず、エナメル塗料(アクリル塗料を侵す事なく塗ったり、落とすことが出来るためです)のフラットブラックとフラットブラウンを半々くらいの分量で混ぜます(ブラックのみだとモールドが際立ちすぎるため少しブラウンを混ぜてやると柔らかくなります)。
かなりシャブシャブになるようにエナメル塗料用の薄め液にて薄めます。
パネルラインや突起物に塗料を含ませた筆をそっと当ててやると、モールドの窪みに沿って塗料が勝手に流れていってくれます。はみ出たり、
意図しないところに塗料が流れても気にしない。それらは後で修正します。
キット全体に同じ作業を行います。
墨入れで、はみ出た塗料を落とします。
エナメル塗料用の薄め液を含ませたティッシュや布で、余分な塗料をふき取っていきます。すると窪みの奥まったところにだけ塗料が残り、墨入れ完了となります。
細かいところは綿棒に薄め液を含ませ同様の工程を行います。
細いパーツに綿棒や指を引っ掛けて折らないように注意!

この作業をキット全体に行うと完成です。最後まで丁寧に・・・
(7)完成
以上で今回の作成は終了です。次回のお題をお楽しみに!
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